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結核の現状

結核は昔の病気じゃないの?

結核は今でも1日に約28人の新しい患者が発生し、4人が亡くなっています。

結核は明治時代から昭和20年代までは「国民病」「亡国病」と言われ、50年前までは、死亡原因の第1位でした。今でも高齢者を中心として毎年約1万人が結核を発病し、1,500人以上が亡くなっています(2023年)1)

小児の結核の発生状況を見ると、2023年の0~14歳の結核患者は37人でした1)。日本と米国の年齢別の結核の罹患率を比較すると、全年齢では日本の罹患率は高いのですが、0~14歳では日本の方が低くなっています(図1)これは日本においてBCGワクチンが広く乳児期に接種されている効果だと考えられています。

1)厚生労働省:2023年 結核登録者情報調査年報集計結果

図1.日本と米国の年齢階級別の結核罹患率
米国の年齢階級別罹患率はCDC:Reported Tuberculosis in the United States, 2023,Table 2より作成
日本の年齢階級別罹患率は公益財団法人結核予防会:結核の統計2024p52より作成

日本の結核と世界の結核について

日本の結核

日本は2021年に結核低まん延国の仲間入りを果たしました。

2021年の結核罹患率は9.2で、「結核低まん延国」の水準である10以下を達成しました。また、2023年の日本の結核罹患率は8.1で、欧米先進国の水準に年々近づき、近隣アジア諸国に比べて低い水準にあります(図2)。

結核の現状1)

新規結核患者数・・・10,096人 罹患率・・・8.1
死亡者数(概数)・・・・・・ 1,587人 死亡率・・・ 1.3

(*:率はすべて人口10万対)

1) 厚生労働省:2023年 結核登録者情報調査年報集計結果


図2.諸外国と日本(2023年)の結核罹患率
WHO:Global Tuberculosis Report 2019 Tuberculosis country profilesより作成
*日本の罹患率は厚生労働省:2023年 結核登録者情報調査年報集計結果より作成

日本の結核患者の4つの特徴

  1. 結核患者の高齢化
    新たに結核と診断された患者のおよそ7割が60歳以上です1)。そのため糖尿病などの合併症やその他の基礎疾患を持った患者が多くなっています。
  2. 外国生まれの結核患者の増加
    近年、新たに発生する結核患者に占める外国生まれの割合が上がっています(2023年では16.0%)とくに若者(20~29歳)では80%に達します1)。今後もこの増加傾向が続くと考えられています。
  3. 受診の遅れ、発見の遅れ
    結核の症状があるのに受診が遅くなったり、受診しても結核と診断されずに発見が遅れる場合があります。 受診、診断が遅れることで周りの人に結核をうつし、集団感染を招く恐れがあります。
  4. 大都市で多く発生
    大都市ではホームレス、日雇い労働者、外国生まれの結核患者が多くなっています。

1)厚生労働省:2023年 結核登録者情報調査年報集計結果

世界の結核

世界の人口の約4分の1が結核に感染しているといわれています。

WHO(世界保健機関)の報告では、2023年に約1,080万人が新たに結核を発病し、125万人が亡くなっています2)。最近では、「結核とHIV/エイズの重複感染」と、イソニアジドとリファンピシンという結核の最も基本的な治療薬が効かない「多剤耐性結核」の2つの問題が深刻化しています。

世界中で発生する患者の69%がアジア(南東アジアおよび西太平洋地域)の国々で発生しています(図3)2)日本との往来の盛んな国々のなかには、結核罹患率が日本の5倍から10倍にもなる国もあります。図2に掲げられていないアジアの結核高まん延国としてはフィリピン(罹患率650/10万、2022年WHO推定)、ミャンマー(360)、インドネシア(354)、ネパール(229)などです3)

このような国から勉強や仕事で来日し、滞在中に結核を発病することもあります。最近ではそのような患者が日本全体の結核患者の10%に達しています。とくに若者では50~60%にもなります。しかし、外国生まれの結核患者の割合は欧米では60~90%程度が普通(高まん延国からの結核の「あふれ出し」と呼ばれています)です。 結核対策は自国だけでは十分ではないことが世界の共通認識です。結核対策の国際協力は自国の結核のためにも重要な意味があります。

2) WHO:Global tuberculosis report 2024
3) WHO:Global Tuberculosis Report 2024 Tuberculosis country profiles

図3. 新規発生患者の地域別分布(2023年、推定)

WHO:Global tuberculosis report 2024より作成