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用語集

インターフェロンガンマ遊離試験

結核感染を診断するための技術で、結核菌特有のたんぱく質を用いて採血した血中のリンパ球を刺激します。結核感染していると放出されるインターフェロンγ(ガンマ)という成分を測定して結核に感染しているかどうかを診断します。もう一つの感染診断法であるツベルクリン反応検査は、BCGワクチン接種で作られた免疫によっても陽性になり、結核感染と区別できない問題がありますが、この検査ではその問題がありません。英語のInterferon-gamma release assayを略したIGRAから「イグラ」とも呼ばれます。

空気感染

結核のように、病原体(細菌やウイルス)が空気中に長く浮遊し、それを吸い込むことによって感染する感染様式を「空気感染」といいます。空気感染をする感染症には他に麻疹(はしか)や水痘(みずぼうそう)などがあります。

頸部(けいぶ)リンパ節結核

首のわきのリンパ節に結核菌が入り込んで結核病巣ができると、リンパ節が腫れて外からグリグリが触れるようになります。ときにリンパ節が化膿(かのう)して膿(うみ)が皮膚を破って流れ出し、そのあとは引きつれを伴ったあとが残ります。かつては「るいれき」とも呼ばれました。

結核疹(けっかくしん)

BCGワクチン接種後1ヵ月前後から全身・顔面に発疹(ほっしん)が出ることがあります。結核疹(様病変)はBCG菌に対するアレルギー反応によって起こる皮膚反応と考えられています。発生後1~2ヵ月の経過で自然治癒します。

結核性胸膜炎

肺の表面と胸壁の表面を覆う膜が胸膜です。この膜の近くに結核病巣ができると膜に炎症が起こり、浸出液が膜で包まれた肺と胸壁の隙間に貯まり、液が多くなると肺を圧迫します。患者は胸痛や呼吸困難を訴えます。これが胸膜炎で、肺以外の臓器の結核としては最も多い種類の病気です。治療のために胸の外から針を刺して液体を抜き取ることもあります。肋膜炎(ろくまくえん)と呼ばれたこともあります。

結核性髄膜炎(ずいまくえん)

結核菌が血流にのって髄膜(脳を包んでいる膜)に達し、病巣を作る病気を結核性髄膜炎といいます。いまでも治りにくい重い病気です。粟粒結核とともに、免疫不全症の人やBCGワクチン未接種の乳幼児にみられる病気です。

結核対策

行政施策として行われる結核対策は感染症法(以前は結核予防法)で規定され、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割を受け持って進められています。もちろんこれに民間の団体(医師会、各種の学校や事業所、住民組織、他のNPOなど)が協力をすることで対策は効果的・効率的に進められます。対策の柱は、予防接種、患者発見、治療・患者支援、患者登録、発生動向調査、普及啓発などが挙げられます。

結核予防会(公益財団法人結核予防会)

1939年財団法人(後に公益財団法人)として設立され、国や自治体の結核対策を民間の立場で支援してきたのが結核予防会です。結核予防会は本部とともに全都道府県の支部を通して結核予防に関する普及啓発を行い、同時に結核研究所で結核やその対策を研究し、全国の対策要員の養成を行ってきました。
結核予防会のホームページに移動する方はコチラをクリック
(日本ビーシージー製造のサイトを離れ、結核予防会のサイトへ移動します)

抗酸菌

抗酸性(色素で染色すると酸によって脱色されにくい性質)をもつ細菌の総称です。結核菌とらい菌(ハンセン病の原因菌)、非結核性抗酸菌が抗酸菌に含まれます。

骨関節結核

血液の流れに乗った結核菌が骨組織に至り、そこに結核性の病巣を作ると骨や骨膜の破壊が起こります。場所は脊椎(せぼね)が最も多く(結核性脊椎炎(脊椎カリエス))、破壊された骨が神経を圧迫して痛みが起こったり、背中が変形したりします。ほかには、股関節、膝関節などに高い頻度で起こります。

骨関節病変・BCG感染症

BCGワクチン接種により全身の様々な関節に骨炎(骨髄炎(こつずいえん)、骨膜炎)を起こすことがあります。免疫不全症の人にBCGワクチン接種した場合には、BCG菌が全身に血行散布して、粟粒結核様の病変をつくり、全身播種性(はしゅせい)BCG感染症になることもあります。これらは結核に準じた化学療法が必要です。また最近では髄膜炎の報告もありました。

再発

いったん「治癒」とされた結核がその後再び発病することをいいます。「再燃」ともいいます。十分強力な治療が行われなかった場合に起こりやすく、具体的には、不規則治療、薬剤耐性、基礎疾患(糖尿病、免疫抑制剤治療など)などがあるときに多くなります。

集団感染

感染性の結核が診断されると、その患者と接触した家族や同僚などに結核が感染していないかどうかを調べます。その結果、2家族以上にまたがり、20人以上に結核を感染させていた場合を集団感染といいます。ただし、すでに接触者が結核を発病している場合は、発病者1人は6人が感染したものとして患者数を計算します。例えば、患者の家族3人と同僚7人が結核に感染していることが判明し、内2人が結核を発病していた場合、発病者が2人いるので感染者数は2人×6+(10人-2人)=20人と計算され、集団感染に該当します。

腎結核

血流にのった結核菌が腎臓(じんぞう)に達し、そこに結核病巣を作ることで起こります。症状は一般の腎炎に似ていますが、尿の中にまじった結核菌が膀胱(ぼうこう)に到達して、結核性膀胱炎を併発することもあります。

潜在性結核感染症

結核に感染だけしている状態のことを潜在性結核感染症と呼びます。結核を発病しているわけではありませんので、他の人に結核をうつすことはありません。発病予防のための治療を行うことがあります(「潜在性結核感染症の治療」参照)

潜在性結核感染症の治療

以前は「化学予防」「予防内服」とも呼ばれ、結核の感染を受け、発病のリスクが高まっていると考えられる人(例えば、何らかの病気の治療のために免疫を抑える薬を飲んでいるなど)がその後発病する可能性を小さくするために行います。

粟粒(ぞくりゅう)結核

結核菌が血中に流れ込み、全身に結核菌が広がる病気で、播種型(はしゅがた)結核とも呼ばれています。肺のレントゲン写真には、粟粒のような影がびっしりと写ります。

多剤耐性結核

現在の結核治療に最も重要なイソニアジドとリファンピシンの両方に耐性を持った結核菌を多剤耐性結核菌と呼び、これによる結核は治療が非常に困難になります。単なる2種類以上の薬剤に耐性を持っている場合と区別しています。

ツベルクリン反応検査

結核菌の感染を受けて結核菌に対する免疫を持っている人に結核菌の成分(ツベルクリン)を皮内注射すると、皮内で免疫反応が起こり、注射後2日経ったころには皮膚に発赤、硬結(しこり)などができます。これをツベルクリン反応とよび、結核に感染しているかどうかを診断します(「インターフェロンガンマ遊離試験」参照)

DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course、ドッツ:直接服薬確認治療)

1994年にWHOが打ち出した結核治療の戦略で、結核患者を見つけて治すために利用されています。結核治療の成功のカギは決められた薬を規則的に一定期間服用すること、これを確保するために医療職員が患者の服薬を目で確認すること(直接服薬確認)で、入院中も外来でも行います。このプロセスが確実に行われるため、政策としてはこれを軸に、さらに①政府の強い関与、②塗抹陽性患者を中心とした確実な診断、③薬剤在庫管理・安定供給体制、④特定の集団分析による治療成績の評価、を組み合わせてDOTS戦略としています。日本を含め多くの国々がこれを採用しています(「日本版DOTS」参照)

日本版DOTS

WHOの提唱するDOTS戦略(「DOTS」参照)を、日本の実情に適合させて実施するためのプログラムです。患者の生活環境や脱落リスクの評価に基づき、服薬確認の厳密さを段階分け(毎日確認から週1回、月1回等々の確認、また服薬の直接確認から家族経由や電話確認など)、また薬局での服薬確認なども含めて弾力的に実践されています。この実践については感染症法で、患者の服薬確保のための主治医および保健所の責務として明文化されています。

肺結核

結核のうち肺または気管支に起こる病気で、すべての結核症の8割を占めます。かつて日本では「結核性胸膜炎」「肺門リンパ節結核」「粟粒(ぞくりゅう)結核」も肺結核に含めていましたが、いまは世界保健機関(WHO)が死因や疾病の国際的な統計基準として公表している分類(国際疾病分類)に従ってこれらは肺外結核に分けられています。

肺門リンパ節結核

感染後間もない時期、肺に侵入して病巣を作り増殖した結核菌はリンパの流れに乗って肺の入り口にあるリンパ節に行き、そこでも病巣を作ります。これが肺門リンパ節結核です。肺実質とリンパ節双方の病巣を併せて「初期変化群」と呼ばれます。感染後間もない子どもや若者の発病ではよくみられる病型です。

発生動向調査

感染症法によって、結核患者の発生頻度の推移をはじめ、発生患者の病状その他の様相、対策に関連する問題点を常時明らかにして対策の現場に知らせ、またその情報を対策の在り方の検討の基礎とする対策活動です。一般的には「サーベイランス」「流行監視」などと呼ばれます。結核の場合には、狭義の発生動向だけでなく、対策や医療の実施状況の評価も重要な焦点となっている点が一般の感染症サーベイランスにない特徴です。

非結核性抗酸菌

非結核性抗酸菌には、人に対して病原性のあるM. aviumM. intracellulareM. abscessusM. kansasii、人に対する病原性がまれなM. gordonaeなど、150種類以上の菌があります。

皮膚結核様病変

BCGワクチンによって皮膚結核に似た変化が生じる副反応の総称です。主に真性皮膚結核様病変と結核疹(様病変)とに分けられます。

副反応

ワクチン接種によって免疫ができる以外の反応が発生することを副反応といい、ワクチン接種では一般的な医薬品による副作用とは分けて「副反応」という用語が用いられます。規定された種類の副反応又はその疑い例を診療した医師はその内容を国へ報告します。

罹患率(りかんりつ)

罹患率は一年間で人口10万人あたりに新たに病気を発病した人数を示した数字で、病気の流行度を示す指標です。