BCGワクチン接種の実際
コッホ現象
コッホ現象とは
結核に感染を受けている者にBCG接種をすると、接種後の早い時期に局所に強い反応が起こります。これがコッホ現象です。
コッホ現象の特徴
- 局所の反応は通常よりも早期(接種後数日以内)に強く起こります。
- コッホ現象は接種後2、3日で出現することが多く、その数日後に反応は最も強くなり、徐々に消退します。
- 通常のBCG接種の局所と同じように扱い、特別な処置は必要ありません。
- ただし、コッホ現象が見られたときは、結核感染を調べる検査を行います。この時点で結核を発病していることもあり、また発病していなくても結核に感染していると判明した場合、潜在性結核感染症の治療が必要です。
- コッホ現象が疑われる場合には、できるだけ接種後2週間以内にツベルクリン反応検査を行います(2週間以降では、今回のBCG接種の影響を受けていることが否定できません)。
コッホ現象の経過(写真提供 公益財団法人結核予防会)
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
接種後2日 | 接種後5日 | 接種後7日 |
コッホ現象への対応
接種後早期にコッホ現象が疑われる局所所見を認めた場合には、まずは感染があったものと考えます。接種局所の局所所見(参照:コッホ現象グレード分類)を観察し、すぐに消退せず、Grade3以上の所見が持続する場合にはツ反(接種後2週間以内に実施)やIGRAを実施して結核感染の有無を評価します。
ツ反やIGRAで陽性を示した例や接種局所の反応が特に顕著な例では結核感染の可能性を強く疑い、さらに、発病の有無を明らかにするため、慎重な画像的精査が必要です。
精査の結果、発病が明らかになった例に対しては有効な発病治療を、病巣が指摘されない例(=未発病感染例)に対しても発病予防を目的とした治療(=潜在性結核感染症治療)を積極的に適用することが勧められます。
小児結核診療のてびき(第1版)p135,136より作成
徳永修:低まん延下における小児結核診療/対策体制に関する検討,
平成28年度日本医療研究開発機構委託研究開発費新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業
「地域における結核対策に関する研究」,研究開発責任者 石川信克
コッホ現象類似反応
- 結核の感染を受けていなくてもコッホ現象のようなBCG接種後早期の強い局所反応が見られることがあります。
- 環境中の抗酸菌による感染やその他の非特異的な要因によると考えられています。
- 真のコッホ現象と比較すると、反応は一般的に弱く(膿疱形成に至らないことが多い)、また接種後1週間くらいで弱くなり、接種後2週間くらいから再び反応が強くなり、その後は初接種と同様の経過をたどります。
- コッホ現象との鑑別検査の結果類似反応と判定されればその後の対応は不要です。
コッホ現象類似反応の経過(一例)(写真提供 公益財団法人結核予防会)
紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。
接種後3日 | 接種後6日 | 接種後7日 |
発赤と軽度腫脹、一部膿疱化が見られます。 | 発赤・腫脹は消退傾向です。 |
再び反応が強くなり始めます。 |
接種後14日 | 接種後30日 | 接種後2ヵ月 |
さらに反応は強くなります。 | 反応は最高潮に達し、強い発赤と膿疱が見られます。 | 反応は緩やかに治っていきます。 |
参考:コッホ現象グレード分類
小児結核診療のてびき(第1版)平成30年9月より転載
表1 局所変化のGradeとその所見
Grade | 局所の所見 |
---|---|
1 | 針痕部の発赤のみ |
2 | 針痕部の発赤+刺入部周辺の健常皮膚の発赤 |
3 | 針痕部の硬結(1ヶ所以上) |
4 | 針痕部の化膿疹(1ヶ所以上) |
5 | 針痕部の浸出液漏出 or 痂皮形成(1~9ヶ所) |
6 | 針痕部の浸出液漏出 and/or 痂皮形成(10ヶ所以上) |
徳永修:小児結核診療のてびき(第1版)低まん延下における小児結核診療/対策体制に関する検討,
平成28年度日本医療研究開発機構委託研究開発費新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業
「地域における結核対策に関する研究」,研究開発責任者 石川信克